凍てついた船(後書きその他)


あとがき

こんばんは、蒼城です。
最後まで読んでくださいまして誠に有り難うございました。

この「凍てついた船」シナリオは2005年の夏頃に、私のブログで「ネタがまとまらないから捨てた」というぼやきにたいし、退治屋稼業プロジェクト総括のたぬくまさんが「それは勿体ないよ!」
と残念がってくださったところから始まっています。そして連載中も毎日コメントに来てくださったたぬくまさん、本当に有り難うございました。それからこっそり「蒼さんのてきすと。」をリンクしてくださった皆さん、絵板で「読みに行くよ!」と励ましてくださった皆さんにも、お礼申し上げます。


ずっと、何かを「退治」する正統派退治屋稼業を描きたい!と思っていました。しかし自分のキャラでないカイザー達はどこかつかみ所が無く、なかなかまとまらずにいました。ヘヴン(私のオリジナル漫画)が行き詰まるたびに思い出し、ちょこちょこネタを考え、書き留めてはいましたがそれだけで何も進まないまま年は2006年に。

2月上旬、やっぱりヘヴンに行き詰まったのがきっかけでこのシナリオに手を付けましたが今度は大分やる気が違いました。そんなにやる気が出てしまった理由は割愛させて頂きます。ブログを掘り返すと、出てきますが…(汗)。

元ネタは、「とにかく寒い星に墜落したカイザー達。実はそれは星ではなく、古代の科学が生み出した船だった!」というもの。その当時は漠然と、2000年も眠っていたという設定にしていました。その船を探検するうち、今の科学でも説明付かないすごい技術が発展してたらしい!すげぇ!もっと探検しよう!みたいなお話しにしたかったのですが、シチュエーションだけで話をまとめられるほど器用ではないのでそのままだらだらと半年以上の月日が流れたわけですね。

宇宙船の動力がサラというのは、このテキストを書き始める直前に決まった設定です。元々は不思議な「石」がその船の動力だったのが、石の力が枯渇して船が凍り付いたという話だったので船に生きた人間はいない予定でした(爆)。「あっ、この設定だとカイザー達脱出できないじゃん!ていうか何も退治しないじゃん、結局」という最大の欠陥に気づき、動力に「人間」を据えることにしたのです。タイトルの「凍てついた船」というのはここから来ていて、今となってはなんで「凍てついて」いるのか最後までわからない話ですが、言葉がカッコイイのでそのままにしました(おい…)。

そういうわけで、前半パート(墜落~蟲駆除)あたりまではテーマを意識することが出来なかったのですが、カイザー達の個性のお陰で勝手にテーマが生まれたのではないかと思います。そして後半パートは、たぬくまさんのコメントへの返信でも書いたのですが「付け足し」でした。フェイスの出番があまりに少なく、しかもおろおろしているだけという可哀想すぎる彼を活躍させるのと、「私らしいテーマ」で話を描くのが目標。

カーズは「井の中の蛙」です。
平凡な星が生んだ巨悪の種ですが、種に過ぎません。
(カイザー達はまだ最低ランクの退治屋なので、あまり凄すぎる敵は出せないのではないかという考えもありました)

カーズの作った蟲はものすごく凶悪ですが、彼自身は自分が支配者になれると思い込んでいる(頭が賢いだけの)普通の人です。でも、そんな賢いだけの普通の人が他人の困ることや犯罪を何の疑問もなく、平気でやってしまう怖さみたいなのを書きたかったので…。

この作品中にいるカーズは、もしかしたら私の中にも、そして皆さんや皆さんの周りの人にもいるのかもしれない…みたいな。いわゆる、真似しちゃいけない大人ってヤツですね。


また、書いている途中で思い知らされたのは「コミカライズ前提で文章が書けていない」点です。自分では頑張ったつもりでも、曖昧になっているところや台詞が続きすぎて漫画にすると冗長気味になってしまうシーンの多さを思うと悔しいです。退治屋のこの部門は、「(原作)」としっかり書かれいるのですから、作画してくださる方が今後現れる現れないにかかわらず、漫画にしやすい文章を書くべきです。この辺りは、これからもっと腕を磨いて行ければいいなと思います。

また機会があれば、次こそは漫画で(無理ならテキストで・爆)退治屋を描かせていただけるといいな、と思います。

ありがとうございました。


余談・制作裏話

■凍てついた船
あとがきでも触れていますが、実際には室温が低いだけで凍ってはいません。
そのせいでなんで「凍てついた~」になってるのか
後書き読むまでわからない話になってしまいました。


■室温
船内はコントロール・ルーム以外非常に寒いです。
この辺のネタを詰め始めるときりがないのでかなり適当な設定ですが
月とか火星とかは、太陽の光が届かない夜、もの凄く寒いそうで。
機能の殆どを停止した船内の室温は下がりっぱなし、ということでした。
説明できる機会がなかったのが惜しい。(しても、墓穴掘るだけって気もしますが)
コントロール・ルームだけ暖かかったのは
目覚めたサラが一生懸命ウイルス対策やってたのでセーフモードながらも
まわりの機械が熱を発していたせいです。
サラがとシャルトが目覚めた時期はそうかわりありません。
じゃないとサラ可哀想すぎ(笑)。1日ぐらい頑張って、
「あーもう無理」って諦めかけてたらおっとっと号が通りかかったんですね。たまたま。


■スイーズ星
この星の設定、最初は「3大勢力のどこにも属さない中立の星」ということにしていたので、
地球の某永世中立国の名前をもじりました。
しかし、中立の立場を取っているからと言って法がはっきりする前の宇宙で
そんな進んだ星を放置してる馬鹿もいないと思い、「夢の星」に変更。


■ベドメン星
「バッド・マン(悪い人)」の根城ちゅうことで、それを鈍った感じにして。
これまたなんと短絡的な。
しかも、ベドメン星にもちゃんといい人いますからね、念のため。
あくまでカーズがワルだっただけです。


■シャルト
ドレスさんの「使ってキャラ」を探してみても、しっくり来るキャラがおらず
勝手にデザインさせて頂きました。
密かにサラに思いを寄せていたりしますが、サラは勿論気づいていません。
この話で一番地味な人物だと思います。
実際、良くも悪くもIQ以外平凡な一般人代表です。


■サラ
「船の動力」という大仕事、それによって倒れる悲劇のヒロインは
彼女以外ありえないと思いました(爆)。
既に樹海惑星、何故何処編2でキャラが定着してきているにも拘わらず
こちらも勝手に設定。


■アークオブスイーズ(サラ達の船)
「スイーズの箱船」です。これまた安易なネーミングですね。もっとセンス欲しい…。
漠然とした裏設定ですが、サラは本当はスイーズ星人ではありません。
ニャニャ星が不思議な種の暮らす星であるように、
超能力が使える人が暮らす星は他にもあるんじゃないかなと前々から思っていました。
サラはなんらかの理由で捨てられたのですがスイーズ星の人に拾われます。
誰もその事実を彼女に告げてはいませんが、彼女は薄々と感じていたようです。
だから船は彼女にしか動かせない、という裏話(笑)。
そんなのがなんでカイザーにも動かせるかというと、
カイザーのタトゥーは「クラックムーン」ちゅう特別なモノで、
あそこまで育つのは珍しいらしいですね。(詳しくは「蒼炎のクラックムーン」にて)
そんなカイザーはきっと人並み外れた精神力があるに違いないというこじつけです。


■ざ・ぐれーと・だーく
カーズの作ったコンピュータ・ウイルス系の蟲です。
勿論カーズ命名(笑)。センスのない人ですね。
…というのは冗談で、カーズの設定画には彼の台詞として
「連れて行ってやるよ 濁りのない闇へ」と添えられていました。
だから「偉大な闇」という名前の蟲にしました。
実際、作った本人の実力の程はともかく、蟲そのものは非常に危険な存在です。
システムのモデルにしたのはかの有名な「トロイの木馬」です。
厳密に言うとこれはウイルスではないですが
勝手にデータを改竄したりばらまいたり、困ったヤツです。
この悪質な性質がまたカーズの妙なねちっこさと合うと思ったんで、こうなりました。


■あーちゃん
メインコンピュータがサラ、と決めた時点で彼女の活躍も決定。
あーちゃんも退治屋カイザーご一行の一員だ!というくらい活躍させたつもりです。
最後は笑えない冗談言ってくれるし。
今作で私が一番好き勝手やっちゃったキャラじゃないでしょうか。


■カーズ
トラップを仕掛けて獲物を待つ蜘蛛のようなヤツです。
わざとに蟲の発信源をたどりやすくして、賢いヤツをおびき寄せようという。
カイザー達が乗り込んできたとき、ノリノリで登場したのはこのためです。
ただ、自分が最強と思い込んでいるのが最大の弱点。


■カイザー
最初の「まともな退治屋」はカイザーが一番活躍するする話にしよう、と決めていました。
最初は脱出することしか考えていませんが、
この船がひとりの力によって動いていることを知ると気が変わります。
それまでは、特に自分に良いことがあるわけでもないので色々無関心だったわけです。
カイザーは金や名誉、地位で動くのではなく、
自分の信念を貫けるならその後世界の全てを敵に回すことになっても
思うとおりに行動するタイプだと勝手に決めつけています。
それこそがフェイスやミーナを惹きつける魅力なのではないかと。


■フェイス
彼の活躍シーンが無いことに何度涙したことか…(笑)。
推理したり、カイザーの心配したり、知らないフリしたり、
なんか地味な役ばっかりでした、今回。
最後の方でちょこっとチャンバラがありますが、相手、しょぼいし。
今度は思いっきり闘わせてあげたいです。

作中で彼が、無意味なほどきつくカーズを縛っていますが
これは内なる怒りの表れです(笑)。
平静を装ってはいますが、あんな事言われて平気だというわけではありません。
本当はこっそり、ミーナみたいに
思いっきりカイザーを心配してあげたいみたいです(笑)。


■ミーナ
彼女が凶暴だという説が有力ですが、
私にとってミーナはどこまでいっても「ヒロイン」です。
あと、設定の説明の為の質問キャラとしても活躍してくれました。
フェイスはとてもそんなタイプじゃないし、その上気づいても黙ってる男(笑)。
カイザーは賢い、と思いたい私はミーナにお馬鹿キャラを押しつけてしまいました。
ゴメンネ、ミーナ。


■リブフリー社
今まで形が曖昧で、これはどう扱うべきかと思いました。
私が今回リブフリー社の設定として勝手に作ったのは
「報奨金制度」と「タヌーへの直接通信」、「流民の報告義務」ですね。
リブフリーが退治屋の7割もを自分の会社の傘下に置けるのは
やはり退治屋にそれだけの利益を与えることができるからなのでは?という考え。
vsSWAT編では、タヌーは同時に何人もの人と
別の話ができる能力があるという設定がありました。
また、同編ではタヌーは個人的にカイザー達に一目置いているようでした。
その能力故に、最低ランクのカイザーでもタヌーが良いと言えば
簡単に彼女と話をすることが出来ます。
「流民~」の話については、次項、「タヌー・ゼステロージ」にて。


■タヌー・ゼステロージ
これ、もちろん語源は「たぬくま、ステージゼロ」ですよ皆さん。
言うまでもないですが(笑)。偉大なる閣下に敬礼。
…おっと話が逸れました。
彼女は宇宙の三大勢力をリブフリーという会社が繋ぐことによって
ひとつにする、という理想を実現するため(実際実現されている)、
リブフリーのトップというポストにいるようです。
なので彼女は自警団だった頃のリブフリーの規則もちゃんと残しているだろうなと思いました。
つまり「宇宙の秩序が乱れることを防ぐため」に「流民の報告義務」があり
報告された流民はリブフリー社に(一時的に?)「保護」されます。
でもスイーズ星はちょっと特別だったので、サラ達が酷い目に遭わないよう
カイザーはタヌーに直談判したわけですね。
タヌーの初出はvsSWAT編で、まだそこでしか登場していないので
それを元に彼女とリブフリーを私なりに作ってみました。あくまで私の勝手な設定です。
退治屋は表向きにはマフィアな商売らしいですが
タヌー本人はきっとそれを理解しつつもそうは思っていないだろうなぁ、と考えています。
タヌーにとって退治屋は夢の開拓者であり、
人に害為す蟲を退治する傭兵のような存在ではないかと。(ケーサツは動きが遅いですからね)
そんな彼女の理想に近い退治屋が「退治屋カイザー」だったらば
タヌーが最低ランクのカイザー達を可愛がりたくなるのも無理のない話です(笑)。


■最低ランク
カイザー達、グリーンマスターなんですよね…。
それゆえに報酬が少ない。
この最低ランクだけど強い退治屋が活躍する話といったら、
やっぱり「世間的には注目されないお仕事」かなーと。
だから未発見の蟲を見つけた、というオチにしました。
さすがに完全に無報酬なのはひどいですよね。
まぁ、結局先にフェイスとミーナが貯めた500万TNも含めて全部
カイザーが浪費してしまったようですが。

ちなみに、この浪費の中には
修理屋に払った「違法OSあーちゃん搭載の口止め料」も入っています。
さぞぼったくられたんでしょうなぁ(笑)。


■カイザーのメット
完全に脱線ネタです。
最初、サラが繋がれている機械にはメットが付いている予定でした。
「うちのねえさん」の創太が付けてるやつのもっとカッコイイ版。
ただ、それだとサラの美貌が隠れてしまうので
カイザーには似合ってもサラには似合わないな、と思い没りました。


■モーニングスター
これも脱線ネタ。
私はフェイスの主要武器はトゲ付き鉄球(モーニングスター)がいい!と
ずっと主張し続けてきてました(笑)。
にもかかわらず、今回フェイスが剣を使っているのは
あーちゃんが蟲を追い込んだコンピュータのコードを斬る、その為だけです(爆)。
シャルトがハサミで切っちゃったら、なんかカッコつかないじゃないですか。
一応ちゃんとした「蟲退治」なのに。


あとがき2(修正後)

退治屋テキスト「凍てついた船」、
本日をもって正式に完結と言うことにさせていただきます。

「おっとっと号」→「きんぎょ」という台詞の置き換え
誤字脱字の修正など小さな修正から、
台詞と台詞の合間に地の文を挟む
中くらいの修正までありますが、
結果的には「料理の仕上げに塩ふりかけた」くらいの
修正になりました。

問題の16話(~19話)は、
変えよう変えようと思っていたのですが、結局
あまり変わらないという結果になってしまいました。
16~19話全てを修正するという暴挙?(笑)に
出ようかとも思ったのですが、
やはり私の設定した井の中の蛙的な「カーズ」は
あそこで勝ち誇って長い口上を述べるのが
一番愚かしくて「らしい」気がしたので。
ただ、何箇所か文章が書き足してあります。

また、カイザーとタヌーの通信シーンの台詞の間に
かなり文章を書き足しました。
カイザーの傍若無人ぶりとタヌー閣下の大人の対応を
お楽しみ下さい。

読み返すたびに、
「もっとマシにはならなかったのだろうか」
という気になりますが、書いているときは
本当に何も考えず(良い意味で)楽しんでいたので
まぁこれはこれということで…。


暫定版を読んでくださった方も
完成版を読んでくださった方も本当にありがとうございました。
とても楽しかったです。

2006.2.15.

  • 最終更新:2020-01-22 12:54:13

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